2015.9.23
サロンワークにおける【臨機応変】って?
サロンワークにおいてよく聞くキーワード(ウチだけかもですが)の一つに「臨機応変」という言葉が印象的です。
僕は割とその表現を聞くと「???」と思ってしまいます。
「お客様一人一人に対して柔軟に対応する。時間、メニューなども含めて」
そういう風に聞くと非常によく聞こえるかもしれませんが、どちらかというと僕が取り組んだ事の本質でいうと…
「臨機応変」というキーワードを捨てた事。
が挙げられます。
1・お客様個人個人にムラが出ることを嫌った。
僕が一番に考える事は「誰であろうがお客様。変わらない事」を考えた。
かつては「臨機応変スタンス」だったかもしれない。
例えば…
「時間、メニュー」などにおいてもすごく柔軟に対応していた。
雑誌が最もブレイクしていた時に、信じられないくらいのお客様に来店していただいてその全てに対応しようとしていた。
まぁ、当たり前ですよね。
「僕は自我が保てなかった」
その結果どうだったかというと、その「臨機応変に対応していた”つもり”」が自分のキャパも超えまくり、仕事にもムラが出てペース配分もできず、おまけに処理能力も乏しくお店全体に迷惑をかけていた様に思う。
結果、僕の売り上げは上がった。
だが…
「果たして、お客様は幸せだったのだろうか?」
と思った。
お客様も色んなタイプの方が来店なさる。
「細かなオーダーをする方もいれば、全く何も言わない方もいらっしゃる」
そう、そういった中で「柔軟」と言えば聞こえはいいが果たして…
「個人個人に対してムラはなかっただろうか?」
そういった疑問が生まれた。
そうして僕は考え方を変える様になった。
2・キャパの範囲内でMAXのパフォーマンス。自分に制限をかけ精神を一定に。
長年通って頂いているお客様に…「木村さん、最近マイルドになりましたよねぇ。」と言って頂ける事がよくある。
「結婚したからかなぁ?年をとったからかなぁ?」
とはぐらかして答えるのですが、僕の中での答えはわかっている。
かつてそれだけ「ソリッド」に捉えられがちだったのは…
「マラソンを全速力で走り続けている状態」
だったからだ。
時間だろうがメニューだろうが「臨機応変」に対応し、その中で歪みが生まれたとしてもやり続ける。
決してそれが悪い事ではないが、そういった歪みは自分だけでなく、アシスタント、店全体にも生まれてくる。
歪みが生まれた中でのパフォーマンス。
「対個人」においてはよいパフォーマンスが提供できていたとしても全体ではどうだろう?
自分が対応しているのは1人ではない。
責任を負う立場であるのは自分個人のお客様だけでなく、店全体のお客様、ひいてはブランド全体のお客様に対しても当然ある。
アシスタントにおいてはそれが更に顕著に表れる。
当然、発展途上。キャパオーバーの事をする事が成長に繋がる部分もあるが、しかしそれが結果良かったか?というと疑問に思う事が多々あった。
「この人にはよくてもまた別の人にはよくなかった」
それでは同じお金を払って頂いていてプロフェッショナルな仕事とは言えない。
そして僕は…
「臨機応変」という言葉を捨てた。
「自己ジャッジ」というアクションは非常に大事な様に思う。
自分は元より、チーム(アシスタント含めた)能力を判断する事が非常に大事な様に思う。
「臨機応変」に対応したいのはやまやまだ。
だが、自分だけで仕事を行っているわけではなく、そこに従事する人間も出来るだけテクニカルに心地よく仕事が出来る温度を見極めるのが大切だと思った。
「ちょっとだけ負荷をかけるくらい」その温度が心地いい。
そういう温度だと「成長」という言葉が生まれるが僕がかつてやってきた事は「マラソンを全速力でずっと走らせる事」だった。
思い切ってそれを捨てる事で非常に精神も一定化し、アシスタントが辞めるなどという事もなくなりむしろ逆に「マイルドになりましたよねぇ。」なんてしみじみ言って頂ける事ともなった。
3・「自分のヘアスタイル」というものの確立
めちゃめちゃブリーチ対応のカラー、ハイライトローライト、モードなヘアスタイルからキッズ、ナチュラル、フェミニン…etc…
ヘアスタイルを作る事においては限りない可能性がある。
かつてはそれを追った。
そうしてめちゃ時間かかる技術、クオリティが必要なもの。
カットにおいても時間がかかるカット。様々な要因が生まれた。
僕は色々考えた。
「自分が好きな女性像ってどんなや?」
と…
僕は「奇抜な女性像」「パーマをかけたスタイル」「デザイン性の高いヘアスタイル」というものが特に好きではなかったのだ。
「そもそもそれを伝える作業ってしてたかなー?」
と、思うと「リターンしていただく」という事に捕らわれすぎていてそういう作業をしてこなかった様に思う。
結果、「全力で提供してきたものが受け入れられたのか?」というとそうではなかった。
「結局、センス、テンションの波長が合う方しか続けて通ってくださる様な事はなかった」
全て「受け身」スタンスでいた自分は無理をしていたし、お客様にも負担をかけていた様に思う。
自分のテンションも心地よくいる事もサロンワークにおいては大事だ。
僕はそれを表現し、発信し続けた。
そして、「あまり自分のセンスと外れる様なオーダーをなさる方はほとんどいなくなった」
自分の「ヘアスタイル」というものはなんだろう?というのを見つめなおす必要もある様に思う。
好き嫌い、得意不得意があって当然だ。
近年ではオールジャンルすぎてそれに対応しようとし、歪みを生んでしまい顧客満足度を下げてしまっているケースもある様に思う。
そういった所に「割り切り」を見せるのも心地よいテンションを生み出し、そして歪み解消の一つにもなるだろう。
僕が「臨機応変」という言葉を捨てた要素はこんな所だ。
もちろん目の前にいる方には全力。
だが、心地よい「テンション」も保っていられる。
その方程式を作る努力や施策ってしていますか?
美容師界の「?」ワードは数多く存在するが、こういった内容の事も一つの要因として挙げられる項目だと思う。
もちろんその「臨機応変さ」でお客様が増えた人もいるだろう。
だが、そういった方程式のバリエーションはあればあるほどいい。
だって人間は皆同じじゃないのだから。
「合う、合わない」が当然存在するだろう。
「下の子が伸びなくて」という悩みは死ぬほど聞く。
その要素の一つとして…
「その人に合わないプレイスタンスを要求していないだろうか?」
という事が挙げられる。
こういった体験談を元になにか閃きが生まれる人が一人でもいるのなら書いた価値はあっただろう。
僕が思う具体的な取り組みというのはこんな感じだ。
その中に「発信」などという言葉はほとんど出てこない。
僕が考える最大の「増やす方法論」は「いらしていたお客様の顧客満足度を上げていく作業。自分のパフォーマンスを無理なく最大限に発揮する事」に尽きるからだ。
その中で生まれるものを「発信」として外に提供しているにすぎない。
「発信」が出来ないと思う人はそういった中身を精査してみると良いだろう。
よく考えるとそういった要因は沢山ある様に思う。
そして…
僕は3年前、新規客が圧倒的に多かった頃より、今現在の方が全然お客様に来店して頂けている。
その結果こそがまた自分のやってきた事に「確信と革新」をもたらしてくれ新たな発想に繋がる要素ともなっている。
今月のプールマガジンはこんな感じ。
一考する価値のある文章になっていると良いのですが。
Category : コラム